Kurume・Tosu Internet Conference

「The Journal of Internet」 Volume5,2001 || H O M E || || 3 || 4 || 5 || 6 || 7 || 8 || 9 || 10

 

時間や場所を越える情報ネットワークの新時代、そんな21世紀が始まった。

インターネットの軌跡と展望

久留米・鳥栖広域情報株式会社 企画部企画課長
足立 務

私がインターネットに出会ったのは今から約6年半前の94年6月である。その当時はインターネットと言う言葉自体も耳にすることはほとんどない時代であった。それから1年半位たったころ、ビール会社のテレビCMで「インターネットて知ってる?」というのを見て、インターネットも一般化しつつあるなと思ったのを憶えている。
また、その当時はインターネットに関する書籍もほとんどなく、特にインターネットサーバ構築に関する書籍は皆無であり、当時サーバ構築を担当することになった私は何をどうすればよいのか調べようもなく、大学の先生に尋ねたり、インターネットの前身であるパソコン通信のフォーラムを利用して情報を収集したり非常に苦労した記憶がある。
ところが今はどうだろうか。書店に行けばインターネットに関する書籍は山積みされており、よくもこれだけの本が次から次へ出版されるものだと感心する次第である。 また、書店に置かれているインターネット関連の書籍は一般の方向けに書かれた入門書だけではなく、玄人向けの専門書も多数店頭に置かれており、当時からは考えられない環境の変化をもたらしていることを書店に行っただけでも感じてしまう。
例えばインターネットの通信を制御する装置としてルータと言う装置があり、このハイエンドマシンとして米国のCISCO SYSTEMS社のものが使われいることがあるが、このメーカを特定した装置自体についての技術解説書まで一般の書店に置いてあるのは驚いてしまう。
また、電話回線を通しての通信速度を見た場合にも時代の流れを感じることができる。
6年程前の電話回線を通しての通信速度は28.8Kbpsが最高とされており、普通の電話回線(メタル回線)を利用してはこれ以上の速度は出せないと言われていた。ところが、1年もたたない内に通信速度は36.6Kbpsに上がり、それから間もなく56Kbpsまで簡単に上がっていた。
ましてや現在はADSLと言う通信方式を利用することにより普通の電話回線(メタル回線)を利用して回線の品質さえよければ1.5Mbpsを実現しているのである。
ところで過去のことはこのくらいにして、それでは今後の展開はどのようになるであろうか。 高速・広帯域、双方向通信、放送のデジタル化など、情報ネットワークの高度化とマルチメディアの到来は、放送と通信を融合し新しいブロードバンド・インフラの整備など高速ネットワークを実現し、インターネットをより私たちのくらしに身近なものにすると考えられている。
たとえば、デジタルテレビや携帯電話をはじめ、さまざまな機器がインターネットを用いて社会とつながり、家にいてもそして移動中でも旅行の予約やショッピング、Eメール、公共サービスを受けるなど、ネットワークはさらに便利で楽しく、快適でしかも環境にやさしく進化していくだろう。
日本のインターネット人口も2000万人時代を迎え、この1年で、家庭と学校・会社のどちらでもインターネットを使う人が急増し、インターネットはどんな場所にいても必要なコミュニケーションツールになりつつある。
また、携帯電話のiモードに代表される無線技術も、今年は音楽や動画を高速にやりとりできるIMT-200への進化で、それをいっそう加速させそうだ。
また、インターネットは共通の関心を持つ人々の交流の場としての"コミュニティ"を作り出し、規模を次から次へと拡大していることも見逃すことができない。
高齢社会においてもシニア自らが楽しみながら持てる経験や知識を地域社会に生かし、貢献していくことを活動の目的とした"コミュニティ"も活発になり、今からはそういった地理的・時間的な差異を飛び越えてインターネットでのオンライン・コミュニティに参加する人が密度の濃い最新情報を獲得できることになるものと思われる。
それでは、インターネットがもたらすものはいいことばかりであるだろうか。 答えはNOである。 このようなデジタル社会には、セキュリティやプライバシーの保護、有害コンテンツの選別などの課題が山積しているのが現状であり、これを克服する為の技術開発とそれを破るクラッカーのいたちごっこはこれからも続いていくのであろう。
しかしながら個人がインターネットを用いて積極的に"コミュニティ"に参加し、そこで得た情報をもとに「インターネットで仕事を探して自宅で働く」「世界中を検索して最も安く物を買う」といった"コミュニティ"での情報交換を中心にすえた新たな世界は確実に進んでいくことになるであろう。
最後に「価値、信条、社会構造、経済構造、政治構造、さらに世界観の再編から生まれる世界は、今日誰も想像できないものとなる。」 常に未来を正確に予測してきたP.F.ドラッカー博士の言葉だが、そういった時代の到来はインターネットの世界では近そうである。


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